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離婚問題解決事例

妊娠中絶の解決事例

事件はこうして起こった

事件はこうして起こったA氏(依頼人:男性)は偶然知り合ったBさん(相手方:女性)と交際を始めました。Bさんは気性が荒く、口論になるとA氏に暴力をふるったりA氏の人格を否定するような暴言を吐いたりしました。

ある日、Bさんは妊娠し、中絶手術を受けました。

A氏とBさんはその後別れることになり、その際、BさんはA氏に対して中絶費用、仕事ができない間の生活費、慰謝料として、計500万を支払うこと等を内容とする誓約書を示し、A氏はこれに署名しました。

その際、BさんはA氏に暴力をふるったり、包丁を突き付けたりしました。しばらくして、Bさんは訴訟を起こして、この誓約書と婚約破棄を理由にA氏に対して500万円を請求してきました。


争いのポイント

A氏は婚約破棄による損害賠償責任を負う?

誓約書は有効?


ポイント➀ A氏は婚約破棄による損害賠償責任を負う?

A氏(当事務所)の主張

「二人の交際は結婚を前提として始まったものではなく、そもそも婚約は成立していない。

仮に婚約が成立していたとしてもA氏がBさんの妊娠が発覚した際にプロポーズをしたがBさんに断られており、A氏が婚約を破棄したことはない。」


Bさん(相手方)の主張

「BさんとA氏は結婚を前提に交際を開始したが、Bさんの妊娠が発覚するとA氏は一方的に中絶を求めて音信不通になった。BさんはA氏の一方的な婚約の破棄により苦痛を被った。」


法律上の婚約とは?

民法に婚約について定める規定はありません。判例は結納や親への紹介などの形式がなくても、二人の間で誠心誠意をもって将来の結婚を約束することで成立するとしています。もっともこの約束があったかどうかは二人の関係や生活状態や周囲への紹介といった事実も考慮して判断されます。

婚約を破棄した場合には常に賠償責任を負う?

婚約破棄について、判例は、当事者の一方が正当な理由なく婚約を破棄した場合には他方の当事者は損害賠償を請求できるとしています。正当な理由にあたるとされているのは浮気、虐待、侮辱行為などです。性格の不一致も程度によっては正当な理由にあたりえますが、一概には言えません。

親の反対や人種差別は正当な理由にはあたらないとされています。


ポイント➀への裁判所の判断

裁判所の判断『A氏はBさんに結婚を申し込んだがBさんは結婚を望まない旨の発言をしている。したがって、BさんとA氏の間に法的保護に値する婚約は成立しておらず、A氏は婚約破棄による損害賠償責任を負わない。

裁判所も、A氏とBさんの間に法律上の婚約は成立していないと判断しました。


ポイント② 誓約書は有効?

A氏(当事務所)の主張

「BさんはA氏と合意によって交際を解消したのだからA氏に慰謝料支払義務はなく、A氏に義務のない高額な支払いを一方的に求める誓約書は公序良俗に反して無効である。」

「また、誓約書に署名する際、A氏はBさんから、暴力等を受けており、強迫されたのだから、強迫により取り消し得る。」


Bさん(相手方)の主張

「合意によって婚約を解消したとしても婚約中に相手から被った苦痛について慰謝料が請求できるから誓約書は有効である。」


公序良俗とは?

契約は当事者が「こういう内容にしよう」と合意したものであれば原則として有効です。

しかし、民法90条は「公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。」と規定しています。漠然とした規定ですが、契約の効力を認めることが社会的に見て妥当と言えない場合には例外的に無効にしようという規定です。

どのような場合が公序良俗違反になるかについては判例が蓄積されています。例えば、犯罪にかかわる契約、性道徳に反する契約、過度の違約金を定める契約などがこれにあたります。


ポイント②への裁判所の判断

裁判所の判断『妊娠および中絶手術についてもBさんはA氏と合意に基づくものであるから、A氏は慰謝料支払義務を負わない。そうであるにも関わらず、誓約書はA氏に義務のない支払いを、実際に要した費用を大きく超えて一方的に要求する内容であって、公序良俗に反して無効である』

このように裁判所も誓約書は公序良俗違反であって無効であると判断しました。


担当弁護士コメント

誓約書等で合意してしまった場合にも、その合意の効力が否定される場合は多々あり、本件は、その中のひとつの例です。判決文では、直接は触れられておりませんが、本件では、Bさんが日ごろから、暴力をふるったりA氏の人格を否定するような暴言を吐いたりしており、誓約書にサインした際にも暴行等が行われていたことが公序良俗違反との判断に影響を与えたと思います。BさんによるA氏に対する暴行等を過去のメールのやり取りや録音データ、動画等で立証した賜物であると感じています。

※プライバシー保護の観点から事案の本質(争点、判決やどのような解決したか)に反しない範囲で事実関係を一部変更している場合があります。

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